主文
1原判決を取り消す。2被控訴人の請求を棄却する。
3本件附帯控訴を棄却する。
4訴訟費用は第1,2審を通じて,すべて被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人の請求を棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2控訴の趣旨に対する答弁
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
3附帯控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)控訴人は,被控訴人に対し,6856万3140円並びに内6000万円に対する平成元年3月16日から,内856万3140円については別表の各支払金額欄記載の金額につき各支払年月日欄記載の日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。
4附帯控訴の趣旨に対する答弁
本件附帯控訴を棄却する。
第2事案の概要
被控訴人は,控訴人から別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)を買い受けたが,同契約の錯誤無効,詐欺による取消しまたは控訴人の債務不履行を理由とする解除による不当利得返還請求権または原状回復請求権に基づき,売買代金6000万円の返還及び同金員の支払の日から民法所定の年5分の割合による利息または遅延損害金の支払を求めた。原審は,被控訴人の債務不履行を理由とする解除に基づく不当利得返還請求を認め,その請求をすべて認容した。
控訴人は,原判決を不服として控訴を申し立て,被控訴人は,附帯控訴により請求を拡張し,上記債務不履行に基づく損害の賠償として,売買に要した費用や税金等,別表の各支払金額欄記載の金額の賠償と,これに対する同表各支払年月日欄記載の日以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
1争いのない事実
(1)控訴人は,昭和50年頃から,別紙図面記載の2000戸を越える大規模住宅団地であるあさひが丘団地(以下「団地」という。)の宅地造成,分譲販売を行っていた。
団地内には18の区があり,住民は区毎に自治会を結成し,さらにその連合体である,あさひが丘連合自治会(以下「連合自治会」という。)を結成している。
(2)本件土地は,別紙図面の「本件土地」と記載された部分で,もとは団地を囲む山の法面に位置し,16区の地域内にあるところ,控訴人は,昭和61年10月28日,宅地造成等規制法による広島市長の許可を得て,昭和62年4月16日までに,本件土地の土砂を掘削採取し,17区にある沈砂池を埋め立てて,両土地を宅地造成した。
(3)その後被控訴人は,平成元年2月13日,控訴人から,本件土地を代金6000万円で購入する売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,同年3月16日,控訴人からの借入金によりその代金を支払った。
同借入金債務は,平成7年7月31日までに全額返済された。
(4)被控訴人は,本件土地を工場建設用地として取得したもので,控訴人は,被控訴人に対し,本件土地に建物建築制限はなく,工場を設置すれば団地から従業員も確保できる旨説明した。
団地住民との間で本件土地に建物を建築しない旨の合意があるなどとは説明していない。
(5)団地では,法面の開発について団地住民からの反対運動があり(ただし,その時期はしばらくおく。),控訴人は,平成6年11月17日,連合自治会及び住民有志が組織した「あさひが丘の環境と緑を守る会」(以下「守る会」という。)との間で,団地法面の利用については,三者の同意を要するものとし,法面利用に関する定期協議の場として環境協議会(以下「三者協議会」という。)を設置する旨の協定(以下「三者協定」という。)を締結した。
(6)被控訴人は,平成9年頃,三者協議会に対し,本件土地の建売分譲住宅としての利用を申し入れたが,三者協議会は同意を拒否した。
また,本件土地周辺には,三者の名で,法面造成などは三者協定に反するものである旨の看板が設置されている。
ただし,本件土地に建物を建築することを法律上妨げる事由は存在しない。
(7)被控訴人は,控訴人に対し,平成11年7月29日付け文書で,本件売買契約の錯誤無効等を理由に6000万円の支払を請求し,訴状で,本件売買契約の詐欺による取消し及び控訴人の債務不履行を理由とする解除の各意思表示を行い,本件訴状は平成12年1月19日,控訴人に送達された。
2争点
(1)錯誤無効
(被控訴人)
守る会等による強力な反対運動が存在するため,本件土地は事実上建物建築ができないものである。
被控訴人は,本件売買契約の際,本件土地に建物が建築できるものと信じており,控訴人に対し,工場建設用地等本件土地に建物を建築して利用することを表示していた。
この錯誤は要素の錯誤に該当し,本件売買契約は無効である。
(控訴人)
本件土地に建物建築の法的規制はなく,被控訴人の主張は争う。
(2)詐欺取消し
(被控訴人)
控訴人は,本件土地から土砂を採取して17区の沈砂池を埋め立てるに当たり,連合自治会との間で本件土地上に建物を建てない旨の合意(以下「不建築合意」という。)をしながら,被控訴人に対し,建物が建てられる旨虚偽の事実を述べてその旨誤信させて本件売買契約を締結させた。
(控訴人)
控訴人が,連合自治会と不建築合意をしたことは否認する。
(3)債務不履行による解除
(被控訴人)
1控訴人は,被控訴人に対し,建物を建築して自由に利用できる土地を引き渡すべき義務を負っているのに,これを履行していない。
2ア控訴人は,団地開発の当初,法面を開発せず保護する方針を取り,団地住民も法面は宅地開発されないと理解していた。
その後,控訴人は,団地住民の十分な理解を得ることなく,昭和60年頃から法面も宅地開発することに方針を変更したため,昭和61年頃から平成元年頃にかけて,本件土地の開発や10区法面の宅地造成,18区法面の家庭菜園計画等につき団地住民の反対運動が起こり,10区と18区の計画は中止となった。
イ本件土地の宅地造成は昭和61年から62年にかけて行われ,16区住民のほとんどが宅地造成反対の署名をする等の反対運動を行ったが,控訴人は宅地造成を強行した。
ウ以上によれば,控訴人は,本件土地に建物を建築する場合住民らの反対運動が起こることは容易に想定できた筈である。
そして,上記反対運動のため,本件土地には事実上建物が建築できない可能性があり,そうすると,被控訴人は契約締結の目的を達成できなくなる。
したがって,控訴人には,これらの事実を被控訴人に説明すべき信義則上の義務があるというべきであるが,控訴人はこれを怠った。
ア控訴人は,連合自治会及び守る会との間で,三者協定を締結した
が,これは本件土地をも制限の対象に含むものである。
また,三者協定に基づき,控訴人は連合自治会及び守る会と連名で,法面開発に反対する旨の看板を設置した。
イ平成8年12月頃,被控訴人は,控訴人及び連合自治会,守る会に対し,本件土地について,分譲住宅の建築販売,団地の集中浄化槽使用,分譲後の入居者の団地自治会への編入につき同意を求めたが,平成9年2月,いずれも拒否する旨の回答を受けた。
控訴人は,本件売買契約締結に当たり,建物建築に問題はなく,団地の集中浄化槽を利用できると説明していながら,上のとおり拒否の回答をしたのである。
以上の控訴人の一連の行為は,本件売買契約に伴う信義誠実義務に違反する債務不履行である。
3控訴人には,以上の債務不履行があり,その背信性は重大であるから,被控訴人は催告することなく本件売買契約を解除することができる。
(控訴人)
1本件土地には建物建築の法的制限はなく,現時点においても建物を建築することは可能である。
三者協議会は,本件土地上に6,7戸の建物を建てその排水を全て流すという,被控訴人から申入れのあった利用法を前提として,集中浄化槽を使用することを拒否したもので,法的には適法に集中浄化槽の使用が認められているし,個別浄化槽を設置する方法によっても建物建築は可能である。
2控訴人が不建築合意をした事実はない。
また,本件売買契約締結時までに,本件土地を含めて法面開発が問題となったことはなく,法面開発反対運動が個別の運動から団地全体の運動に広がったのは,早くとも平成5年以降のことである。
控訴人は,住民等の反対により本件土地に建物の建築ができなくなることを予見することはできなかった。
なお,本件においては,住民の反対そのものではなく,その反対により建物の建築ができなくなることを控訴人が知り,または重過失によってこれを知り得なかった場合にのみ説明義務違反が認められるべきである。
したがって,控訴人に説明義務違反はない。
三者協定は本件土地を対象とするものではなく,第三者を法的に拘束するものでもない。
三者協議会が被控訴人の建売住宅建築や集中浄化槽使用について同意を拒否したとしても,被控訴人が本件土地に建物を建築することは可能である。なお,控訴人に集中浄化槽の利用の可否を決する権限はない。
契約の履行終了後9年もの期間が経過した後に,被控訴人から本件売買契約締結当時とは異なる利用方法について三者協議会に同意を求めたのに対し,三者協議会の一員として控訴人が同意を拒否しても,経過期間や上記三者協定の趣旨等を考慮すれば,控訴人に信義則違反があるとはいえない。
3したがって,控訴人に債務不履行はない。
(4)債務不履行による損害額
(被控訴人)
被控訴人は,売買代金6000万円以外に,本件土地の取得に伴い,別表記載の金額を支払ったが,契約解除によりこれらの支出は,無に帰したから,控訴人の債務不履行により同額の損害を被った。
(控訴人)
被控訴人の主張は争う。
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第3証拠
原審及び当審記録中の証拠関係目録に記載のとおりであるから,これを引用する。第4争点に対する判断
1事実関係
(1)争いのない事実,証拠(甲6,7の1ないし5,8,13ないし16,17の1・2,18の1,19ないし21,48,49,52,乙1の1・2,2,3,4の1・2,5の1・2,6の1・2,10の1・6,12,13の1・2,14の1ないし13,15の1・2,16の1・2,17の1ないし3,18,19,20の1・2,21の1・2,22ないし24,28,30ないし32,36,37の1・2,原審証人A(第1,2回),同B,同C,同D,原審被控訴人代表者本人,当審証人E(ただし,後記信用しない部分を除く。))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
1本件売買契約締結までの経過
控訴人は,昭和50年頃から,団地の宅地造成,分譲販売を行っていた。
団地の周囲には山が残されており,その斜面(法面)が団地を取り囲んでいた。
控訴人は,昭和55年3月頃から法面の販売を開始したが,販売に当たって使用する契約書(甲13)には,使途は原則として花木,果樹の栽培等に限定され,区画,形質の変更や建物,構築物の建設を禁止すること等の約定が付されていた。
昭和62年4月,控訴人の理事会において法面の販売価格の見直しが決定され,平成元年頃からは,控訴人自ら法面の開発を計画するようになり,法面を販売する場合にも,使途の制限を付していない契約書(甲14)を用いるようになった。
なお,団地住民のうち相当数の者が,法面が宅地造成等されずに存置されることを期待していた。
また,控訴人が販売方針の変更について団地住民に説明したことはなかった。
控訴人は,16区の法面にある本件土地の土砂を掘削採取してこれで17区にある沈砂池を埋め立てて,両土地を宅地造成して販売することを計画し,16区自治会長のB(以下「B」という。)及び17区自治会長にも概要を説明した。
16区については,Bが団地住民の意見を取りまとめたため,控訴人が16区住民と直接折衝したり,意見を聞いたりしたことはなかったが,16区の住民の中には,トラックの運行に対する苦情や土砂の掘削に反対の意見を有する者もいた。
また,17区住民には説明会を開催し,その際出席した30人の住民中4,5人の住民から環境の変化を理由とする反対意見が出されたが,控訴人は環境の悪化はないと判断した。
控訴人は,昭和61年10月28日,宅地造成等規制法による広島市長の許可を得て,昭和62年4月16日までに,上記両土地を宅地造成したが,工事中及び完成後に住民との間でトラブルはなく,上記17区の造成地(沈砂池の埋立地)については,同月から建売住宅の分譲が始まり,既に完売している。
2本件売買契約
本件土地は,5筆からなり,そのうちおよそ北半分(61%)に当たる別紙物件目録記載1及び5の土地(1356平方メートル)が上記の土砂採取により宅地として造成された平らな土地である。
南半分の同目録2ないし4の土地は,山裾の北東側斜面で,雑木が茂っており,下端に設けられた高さ3メートルほどの擁壁を隔てて,北半分に接している。
平地部分の道路際には集中浄化槽につながる汚水桝が1個設置されている。
控訴人は,昭和62年4月頃から,複数の不動産仲介業者に本件土地売却の仲介を依頼していたところ,平成元年初め頃,Fから被控訴人に販売したい旨の話があり,これに応ずることになった。
平成元年2月13日,控訴人と被控訴人とは本件売買契約を締結し
た。
被控訴人は,本件土地を工場建設用地として取得したもので,控訴人は,被控訴人に対し,本件土地(北半分)に建物建築制限はなく,工場を設置すれば団地から従業員の確保もできる旨説明しており,重要事項説明書(甲21)には,排水について集中浄化との記載があった。
なお,控訴人から,団地住民との間で本件土地に建物を建築しない旨の合意があるとか,団地住民が建物建築に反対しているなどとの説明はなかった。
3団地住民らの動向
平成元年夏頃,本件土地に被控訴人の漬物工場が進出してくるとの話が団地住民の間で広まり,当時約170世帯あった16区の住民のうち法面の近くに居住する者らが,工場から発生する臭気の問題等からこれに反対して30名強の署名を集め,当時16区自治会の会長であったB宛ての文書として同人に提出した。
同人は,これを当時控訴人の嘱託職員であったA(以下「A」という。)に提出しようとしたが,Aはこれが控訴人宛ての文書でないことから,その受領を拒否した。
しかし,工場進出について,上記署名活動以外には対外的な活動といえる反対運動はなく,これが連合自治会等の議題に上ることもなく,上記反対者らにおいて,控訴人の文書受領拒否に対して新たに控訴人宛の文書を作成・提出したり,控訴人に事実関係を確認したりすることもなかった。
控訴人は,昭和63年7月頃,18区の法面の土地(j番外の土地)を家庭菜園に造成することを計画し,団地住民に対する説明会を開催したが,住民の同意を得られず造成工事を断念した。
控訴人は,昭和62年頃,10区の法面の土地(k番の土地)を宅地造成し,昭和63年に完成したが,上記造成工事について団地住民との間でトラブルはなかった。
ついで平成元年6月頃,控訴人は,10区の別の法面の土地(l番の土地)の宅地造成を計画したが,10区の住民がこれに反対し,同年6月3日には控訴人に対する申し入れを行ったり,同年7月6日の運営委員会において,連合自治会も上記造成工事に反対してほしいと申し入れる等の対応をとった。
控訴人は,平成2年10月,上記造成予定地土地について汚水桝の設置申請を行い,平成5年3月頃から10区住民との折衝を行った。
これに対し,上記工事に反対する10区の住民らは,同年6月13日頃から署名活動を行って多数の署名を集め,同年7月5日には控訴人に嘆願書を交付し,さらに,法面造成反対運動を団地全体の問題として住民運動の輪を広げるべく,守る会とともに運動を行うこととした。控訴人は,結局上記工事を断念した。
上記10区の土地の問題のほか,平成3年3月,16区の法面の土
地(m番n。
本件土地より南方)を買い取った業者が同土地を宅地造成しようと計画したこと,平成4年4月及び平成5年4月に6区の法面の土地(o番の土地)が業者に売却されたこと,平成5年頃18区の法面の土地(p番の土地)が無許可で造成されたこと等から,守る会や6区,10区,16区,18区の住民有志らは,平成5年頃から,法面の開発や造成に反対する旨のビラ等(甲17の2,18の1・2,19,乙4の1・2,5の1・2,6の1・2,13の2,14の8・12,15の2)を作成し,団地住民らに配布し,連合自治会に働きかける等して,法面の開発や造成に対する反対運動を行っていたが,上記のビラなどに本件土地のことは記載されていない。
4本件売買契約履行後の控訴人の行為
団地住民や守る会による法面の開発や造成に対する反対運動等が日増しに盛んになってきたため,控訴人は,平成6年11月17日,連合自治会及び守る会との間で,団地法面の利用について,三者協定を締結した。
上記協定では,法面について,構築物等の建設等には上記三者の合意を必要とすることなどが合意されたが,第2条で,法面とは「団地の造成時,法面・未利用地とされている土地をいう。
(別紙添付図面)」とされ,協定書(乙23)の添付図面に本件土地は記載されておらず,三者協定は本件土地を対象にしていない。
控訴人は,連合自治会及び守る会と連名で,平成6年頃,「法面は団地の保全,防災,緑地景観保持のために必要であり,これを壊す行為は三者協定違反になる。」旨を記した看板を団地内の各所に設置した。
被控訴人は,平成8年12月,控訴人,連合自治会及び守る会に対
し,本件土地(北半分)に6,7棟の住宅を建築して分譲するので,団地の集中浄化槽を利用して排水をすること,分譲住宅の入居者を団地自治会に編入することについての許可または同意を文書で申し入れたが,三者は翌9年2月これを拒否した。
もっとも,連合自治会の会長(集中浄化槽の管理を行う「あさひが丘団地管理組合」の組合長を兼ねる。)は,本件土地に設置された汚水桝は,集中浄化槽につながる汚水桝として,所定の区画数変更届が提出されて広島市の審査を経ている関係で,その汚水桝及び集中浄化槽の許容限度内であり,かつ格別な異物が混入するおそれがなければ,集中浄化槽の利用申し込みを拒否できないものと考えている。
なお,集中浄化槽の利用ができなくとも,個別浄化槽を設置することで建物を建築利用する方法があり,団地内にはその例もある。
(2)1不建築合意の有無について
甲11,12,20,原審証人A(第1回)には,控訴人が本件土地の宅地造成に先立って不建築合意をした旨の部分があるが,甲11の作成者であるBは,原審において同文書の記載は同人の記憶に基づくものではない旨証言しており,甲12,20の記載及び原審証人Aの証言は伝聞に基づく不明確なものに過ぎず,反対趣旨の証拠(乙2,3)に照らして信用できない。
他に同事実を認めるに足りる証拠はない。
2本件土地の造成反対運動について
被控訴人は,本件土地の宅地造成がなされた昭和61年から62年頃,16区住民のほとんどが宅地造成反対の署名をする等の反対運動を行った旨主張し,証拠(甲20,38の1,39の1,62,63,68の1,69,原審証人A(第1回),当審証人E)はこれに副う。
しかし,上記各証拠の内容の多くは抽象的で何時のことを記載しているのかも明確でなく,昭和61,2年当時に反対意見があったことは示されているものの,控訴人との間でどのような交渉がされたのかはまったく明らかでなく(被控訴人は不建築合意がなされた旨主張しているが,それが認められないことは上記1のとおりであり,甲68の1の記載はむしろ同主張に反するものである。),当時16区の自治会長であったBが,造成工事が始まったとき反対があったかどうかは知らないと原審において証言していること,被控訴人が取得した後の平成元年夏頃に漬物工場進出反対の署名をした者が30人強に止まっていること,上記主張と反対趣旨の乙2,原審証人Cの証言に照らせば,一部反対意見があったとしても,16区や団地の住民が本件土地の宅地造成について反対運動と目するほどの活動を行ったり,控訴人との間で交渉を持ったことは認められず,上記証拠中これに反する部分はたやすく信用できない。
被控訴人の漬物工場が進出することに対して署名活動がなされたことは前記(1)3認定のとおりであるが,署名した人数は30人強に止まり,それ以外に反対運動や控訴人との交渉が行われたことは認められないから,上記事実をもって,当時16区や団地の住民の多数が法面開発に反対する運動を行っていたとはいえない。
そして,署名活動はそもそも本件売買契約締結後に行われたものであって,本件売買契約締結より前に,被控訴人の漬物工場進出に対する反対運動があったとは認められない。
3被控訴人は,三者協定が本件土地を対象とするものである旨主張するが,同協定2条の文言上,そのように解することには無理がある。
原審証人Cのこの点に関する証言は添付図面を考慮しないものと認められるので採用できず,甲46の1も同協定2条「法面」についての解釈を基礎付けるものとはいえない。
2争点1(錯誤無効)について
上記1認定の事実よれば,本件売買契約当時,本件土地に建物を事実上建てられない程の団地住民の反対運動があったことは認められないから,被控訴人の錯誤の主張は理由がない。
3争点2(詐欺取消し)について
前記1認定のとおり,控訴人が不建築合意をしたことは認められないから,被控訴人の詐欺の主張を認める余地はない。
4争点3(債務不履行)について
(1)引渡し義務について
本件売買契約に基づく控訴人の引渡債務は,特定物の引渡債務であるから,現状での本件土地の引渡しにより債務の履行は完了したものと認められる。
したがって,控訴人に目的物の引渡債務の不履行はない。
(2)説明義務について
1前記1認定の事実によれば,本件売買契約締結時までに,18区の法面を造成して家庭菜園にするという計画について,団地住民に対する説明会の結果同意が得られず,控訴人が計画を断念したことが認められるが,それ以外に,団地住民が法面開発の反対運動,とりわけ造成済みの土地における建築に反対する運動をしていた事実は認められない。
また,前記1認定のとおり,団地住民のうちの相当数の者が,法面が宅地造成等されずに存置されることを期待していたことが認められるが,分譲当時控訴人がこれを買主に確約していたことを認めるに足りる証拠はない(この点に関する甲17の2,18の1,20,原審証人A(第1回)は具体性や裏付けに乏しく,信用できない。)。
確かに,法面に建物が建築されることに団地住民が一定の抵抗を示すであろうことは予想し得るところではあるが,それは,このような位置・形状の土地の売買において一般的に予想されるものであって,とりたてて売主が説明すべき事柄とはいえない。
控訴人が法面を販売する際に,当初はその使途を制限していたとしても,団地住民に法面の利用について約束をしたわけではないから,その後上記制限をなくすに当たり団地住民に説明をしていないとしても,上記結論を左右しない。
2したがって,法面開発反対運動があったことないし建築反対運動が予想されることについて控訴人の説明義務違反があった旨の被控訴人の主張は理由がない。
(3)付随義務について
1控訴人が本件売買契約の履行を終えており,説明義務違反もないことは上記(1)(2)に説示したとおりである。
そして,売主が土地売買契約上の本来の債務である目的土地の引渡しを終了すれば,原則として,その後になされた売主の行為によって債務履行終了の効果が覆ることはなく,その行為が債務不履行に該当することはないというべきである。
もっとも,買主が契約当時予定し売主も了解していた方法での利用については,それを達するに相当な期間中は,売主は,買主のその方法による利用に協力し又はこれを妨害してはならないという,契約上の信義則から生ずる義務を負うということはでき,その不協力ないし妨害行為のために土地の利用ができず売買の目的を達し得ない場合は,買主において契約を解除できる場合もありうるとは考えられる。
しかしこの場合も,その利用方法に変化がなくても,売買後に時間が経過するうちには環境条件や行政規制の変動等によって,可能な利用形態は変化するものであって,売主であるからといって,いつまでも買主の希望する方法での利用が可能となるよう協力し,あるいはこれを妨げてはならないという義務を負うものではなく,売主の行為が目的物の利用について買主の希望を掣肘することとなったとしても債務不履行に当たることはないというべきである。
2被控訴人が申し入れた,団地の集中浄化槽の利用について,控訴人が連合自治会及び守る会とともに,許可を拒否したことは前記認定のとおりである。
しかし,上記の申入れは,債務履行終了後約8年が経過した後のことであるうえ,上記申入れにかかる利用方法は,被控訴人が契約時予定していたところとも異なっており,かつ,建築予定の分譲住宅数や規模も具体的ではない。
確かに本件売買契約締結時の重要事項説明書には「集中浄化」と記載されてはいるが,この説明をしたからといって,土地をどのように利用する場合でも,集中浄化槽を利用できることを保証したものとはいえないし,団地の集中浄化槽を管理しているのはあさひが丘団地管理組合であり,団地の住戸の増加や,浄化に関する規制の変化等に伴って集中浄化槽の利用に様々の制約が生じてくるのは当然のことでもあって,時間の経過や利用方法の変更を考えると,上記申入れに対して控訴人が同意してこの浄化槽を利用できるよう協力し,あるいは利用を妨げてはならない義務を負うとは解されない。
しかも,集中浄化槽の利用は,住宅の建設及びその利用に不可欠でもない。
また上記申入れと合わせて,被控訴人が分譲住宅入居者の団地自治会への加入を申し入れ,控訴人らが同意しなかったことも前記のとおりであるが,一般に,買主から土地を分譲取得する第三取得者の団地自治会加入についてまで,土地の売主が協力すべき義務を負っているとは解されない。
そうすると,控訴人が三者協議会の一員として,建築されるであろう建て売り住宅の購入者たる第三者の団地自治会への加入及び集中浄化槽の利用に許可ないし同意しなかったことが債務不履行に該当するとは考えられず,これを理由として売買契約を解除することは到底できないというべきである。
また,控訴人が連合自治会及び守る会とともに設置した看板の記載は,法面を壊すことが三者協定に違反すると訴えて,法面を宅地などとして造成することに反対しているものに過ぎず,既に造成された土地についての利用に反対する趣旨のものではないから,三者協定の性質からみても,控訴人の行為が債務不履行に該当するとはいえない。
控訴人は,三者協定を締結しているが,それは本件土地を対象とするものではなく,しかも協定の対象とされた土地に第三者が建物を建築することを法的に妨げるものでもないから,三者協定の締結が債務不履行に該当することはない。
3したがって,本件売買契約に基づく債務を履行した後の控訴人の行為が,同契約の債務不履行に該当するとはいえない。
5結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求はすべて理由がなく,これと異なる原判決は相当でない。
よって,本件控訴は理由があるので,原判決を取り消して被控訴人の請求を棄却し,本件附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
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なお「免責手続」は自己破産とは別に行われるので注意が必要。
自己破産:一般的な自己破産。債務者(会社、個人)が管轄地域の地裁に申し立てる。
準自己破産:債務者ではなく取締役等が管轄地域の地裁に申し立てる。会社の意思ではない点に注意。
債権者破産:債権者が管轄地域の地裁に申し立てる。
会社あるいは個人の意思ではない点に注意。
その他、色々な注意点があるので弁護士や司法書士に依頼をするのがベスト。
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